茶園の覆(おおい)に籠められた繊細な想いと栽培 Traditional agriculture that covers the tea plantation with rice straw.
2022年 01月 27日
「柿の木にスズメが止まって見え隠れをしたら、よしずを広げや。
カラスが止まって見え隠れしたら、わらをふきや、
たれべりの悪いのは、たれの作り方が悪いのやで。」
茶摘み前の重要な「覆(おおい)」について吉田喜三郎さんから教えられた思い出を小山正美さん(当時 丸久小山元次郎商店社長)が書いている。
このことはすでに明らかにしてきた。
先人の教えで、「雀の葉隠れ」という言葉がある。新茶が採れる5月より少し前に、茶園にヨシズと藁で覆いをする。
その覆いを被せる時がバロメーターに「雀の葉隠れ」という言葉。
柿の木に雀が止まって、葉っぱで少し雀が見え隠れするくらいの葉の大きさになったら、ヨシズ覆いを始める。
雀が完全に柿の葉に隠れるくらい葉が大きくなったら、ヨシズの上から藁を振る。
と掲載してきた。
だが、「雀の葉隠れ」にはもっと細かな重要なことが教えられていたのである。
雀とよしずを広げる時期。カラスとわらを葺(ふく)時期。さらに茶摘みの前の「覆(おおい)」の「たれべり」まで。
たれべり(垂れ縁)とは、「たれ」とは何か、吉田勝治に聞いてみた。
「たれ」(垂れ)とは、覆いの側面に重ねるものであるが、その重ねが充分でないと茶園を覆った側面から太陽の光が入りすぎる。
そうならないように覆いの側面に「たれ」をうまく重ねる。
だが、「たれ」そのものがよくないと、重なる(つなぎ)の部分から「適切な太陽の陽差し」がはいらなくなる。
それだからこそこころを籠めて「たれ」をていねいに造り続けてきた、と話された。
「たれ」の重なる(つなぎ)部分は、写真では茶園に右からの強い西日が射し込まないように重ね合わす部分が工夫されている。
逆向きに重ねると強い西日が射し込んで、茶摘みの時にいい茶葉が収穫出来ないとのこと。
東西南北、太陽の動きに合わせた「たれ」の重なりをつくることは、天と地の大自然と茶園の茶樹を絶えず注視しておかないと出来ないのである。
何もかも江戸時代から続く農法を引き継ぐ大変さを知った。
お茶と柿の葉とスズメとカラス。それに合わせて茶摘み前に茶園を覆う宇治 小倉に伝わる農法。
手塩に掛けてお茶は栽培されて来たが、さらに柿の木と柿の葉はお茶づくりにとても大切な役割を小倉の地域で担ってきたことを最近知った。
(注)「吉田喜三郎翁の追憶」(吉田喜三郎翁の追憶集刊行委員会 1985年1月15日)より引用等させていただいています。
by ujimeicha
| 2022-01-27 20:10
| 宇治茶を知る
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